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大 山 訪 問

その2

2007年・秋



待ちに待った11月の到来!
11月23日の新嘗祭に合わせて、筆者は再び鶴岡へ。

10月、東京の某ホテルで開催される吟醸酒を楽しむ会に、
夏に見学させて頂いた大山の冨士酒造さんが参加されると伺って、
筆者は、夏に同行した友人と共に、足を運んだ。

冨士酒造のお若い社長さんは、筆者達を覚えていて下さって、
嬉しい再会のひとときだった。

下はその時の様子。とにかく盛況で、あまりの人の多さに吃驚。


     


この時、冨士酒造の社長さんから、今年の酒造りは11月6日から始まると伺い、
筆者は11月に再び庄内に行くのを心待ちにしていた。


* * * * *


そうして11月21日、大山再訪。

暴風雨+雪で、今回は残念ながら、蔵の外観を撮影することは出来なかった。

しかし、夏の訪問時とは違って(当然!)、
蔵の内側は、動いていた。

新しい生命が誕生する前の胎動のような、ワクワクしてくる動き。


午前中、最初に訪問したのは、加藤嘉八郎酒造さん。

大山の4つの酒造の中では一番若い、
明治5年(1872年)の創業。

夏にお会いした工場長さんと、嬉しい再会。

今回も、懇切丁寧に、色々と説明してくれた。






「暖気(だき)」の状態にある酒母たち。
1日目の桶、3日目の桶・・・とたくさん並べられていて、
そのうちのいくつかを味見させて頂いた。

上の写真手前の方は、「9号」という酵母を使い(普通酒用)、
後ろの方は山形の「KA酵母」というものを用いている(吟醸酒用)。



 →  →



時間がたつほどに、酵母は文字通り、倍増していく。

上の3つの泡写真は、右端が最終段階に近いもので、
このように、大腸のような形状になるのが、良い酒母である目安だそうだ。
最終的に、酵母は1cc中1億〜2億存在する。

味見させて頂いた3種類の酒母たちは、
上の3つの時期の写真にほぼ相当していると思うが、

左端は、まだ控えめで、おずおずと、おとなしい。
「どうしよう、発酵しちゃって、いいのかな…」という感じ。

真中の段階で、本性が現れてきて、
右端になると、しっかりと本性が前面に出る。

筆者の好きな、どぶろくに近い味。


桶の中では、元気な酵母たちがはじける
ピチッというか、プチッというか、そんな音が響く。

じっと見ていると、酵母王国の住民達が、
ものすごい勢いで人口を増やしながら、
お祭りか一揆でも起こそうとしているかのようで、
生き物だなあ…と実感する。
ただの生き物ではなく、異様にパワーあふれる生き物。






少し分かりづらいかもしれないが、米を水に浸しているところ(浸漬)

水が、米粒の中心部(心白)に浸透していくと、
米粒が透き通ってくる。
どのくらい米に水を吸わせるかは、酒の出来上がりに大きく影響する。

浸漬に限らず、どの作業も、
微妙な時間・温度を見ながら、細心の注意を払った真剣勝負。






(上) 米を蒸す機械。



(上) 熱く語る工場長さんと熱心な聴衆。


(下) 一息つける時には、ここでお茶をするのかな…。








麹菌をふる場所。
米の温度が下がらないよう、機械の両脇には
40℃の温水が入る仕組みになっている。

ほんのわずかな温度差、時間が、
結果に大きな違いをもたらすのだから、
恐ろしい世界である。

麹菌が繁茂した状態で、下 ↓ の
管理箱(管理棚?)に移す。



(↑工場長さんが懐中電灯で照らしてくれています。)


麹菌は米の表面に繁茂しやすい。
それを、表面ではなく、米の中へ、中へと繁茂させてやること、

つまり、本来の性質に反することをするのが
麹作りだという。


上の写真の米粒たちは、皆、菌に侵食(?)され、
通常の形を失い、プチプチした状態であるのが、肉眼でも分かった。
(…上の写真では分からないと思いますが…。)





大山訪問 その1」でご紹介した宇宙基地タンク。
上はそのタンクの中に納まった、もろみ。

ドロドロした感じだが、香りはとても良い。

上の階にあるマンホール状の穴から
タンクの中を見下ろしている。

酸素が全くない状態だそうで、
誤ってこの中に落ちようものなら、命取りになるとのこと。


下の写真のタンクでは、ブレードが回転中!





大山さんは、酵母を純粋培養する設備も持っているそうで、
そのような設備を有する蔵は、蔵全体の中でも1/3程度だそうだ。

それに加えて、創意工夫に満ちたオリジナルの機械たち。
徹底した温度管理。

宇宙基地のようなハイテク機器を擁する一方で、
人の目や手が相変わらず重要な役目を担っている。



酵母に侵食(?)された米粒を切断し、
断面図を顕微鏡で見せてくれる工場長さんの、
手馴れた手つきや、明快な話しぶりから、
筆者はてっきり、
植物生理学やら、微生物学やらを専門に学ばれた方だろうと思ったが、
そうではなく、林学を学ばれたのだとか。

それにしても、
こうして熱心に麹に侵食されていく米粒の様子を
筆者達に見せてくれるその様子に、
筆者は、なんとなく、
工場長さんは、科学的好奇心に満ちた人で、
麹に侵食されていく米粒の様子を観察したいという、
純粋にアカデミックな動機から
顕微鏡やペトリ皿などを常備して、
頻繁に米粒の様子を見ているのだと思った。

…で、念のため、
「純粋に知的好奇心から米粒を切断して観察しているわけではなくて、
必要に応じて観察しているんですね…?」…と伺うと、

「もちろん!」と。

「<見たい見たい> は、<良い麹を作りたい> からだよ!」


…そう、まるで科学者であるかのような錯覚をおぼえてしまうけれど、
すべては、良い酒を造るため。

彼はあくまで、酒を造る人なのです。

(知的好奇心旺盛な御方であることも、疑い得ない事実だと思うが。)


それでも、「何故こうなるのか」という、
物事の「理」を追求する話しぶりは、筆者も見習いたいと思うくらい。
工場長さんは、良い科学の先生にもなれると思う。


前回も、今回も、丁寧に色々教えて下さって、どうも有難うございました!




…蔵見学を1ページに収めるつもりだったが、
かなり長くなりそうなので、
「白梅」さんと「冨士」さんは、次ページ以降に…。



(2007年11月30日記す)

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