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荘内大祭黒川能奉納と八月の黒川


(2013年8月・その2)



今回の黒川滞在は、お盆の時期から8月下旬まで。







長めに設定した一番の目的は、上座太夫さんに『難波』の仕舞を教えて頂くため。

昨年の夏、破の舞を教えて頂いた際には、
一週間では厳しい感じだったので、今回は約10日間。
気合を入れて頑張るぞ!
…ということで、毎朝自転車で朝稽古に通う。



お盆を過ぎると
だんだんと田は
黄味を帯びてくる。

天候に合わせて
田の水の管理。

右の写真は、
少し遅れて咲いた
米の花。

小さな白い
プチプチしたもの、
分かるでしょうか?

ほんの一瞬しか
咲かないもので
あるとのこと。






滞在したお宿のご近所さんである大鼓の遠藤幸男氏(↓)。







2011年の王祇祭で出張世帯持役をつとめた幸男さん。
筆者はそのとき初めてまともにお話する機会を得た。
厳めしい(?)外見とは裏腹に、
とても話しやすい御方である。茗荷の出荷準備中。







こちらはお世話になったお宿の息子さんの雄一さん(↑)。
冬に出荷するシクラメンの「葉組」の作業中。

この温室の棚は、4月はじめに亡くなられた、
太鼓の師匠さんだったお父上の斎藤篤氏と一緒に作られたのだそうだ。

色々話を伺っていると、篤さんは、
実にさまざまな才能をお持ちだったようで、
人生を生き急ぎすぎてしまったような死が、本当に残念でならない。

お父上と共に作られた棚で、花の手入れをする雄一さん。
今年から花以外に米作りという大きな仕事も担うことになり、
心身ともに大きな重圧を感じていることだろう…
どうにか頑張って、最初の年を乗り切ってもらいたい。



…上の写真の通り、シクラメンは夏にも花をつけるものの、出荷は冬。
冬の出荷に向けて、
いらない芽を摘み取り、芽を増やし、
葉の形をきれいに整えていく。



(↑)上のように、
中央部分を開き、芽を摘み取り、
中心部を丈夫にしつつ、
葉をきれいな半球状に仕立てる。
(↑)摘み取られてしまう
運命だろうが、
筆者にとっては初めて見る品種、
「クラシカル・ドレス」。
(↑)お宿は、お米の他に
メロンも作っている農家さん。
上は可憐なメロンの花。

(↑)メロンの糖度を調べる。
糖度14度が、「秀」クラスで
出荷する基準であるとのこと。



下は朝稽古のあとに撮影した、太夫さん宅の朝顔たち。






窓一面、きれいな朝顔のカーテン。
かなりの暑さだったけれど、
この窓のあたりだけ、心なしか、涼しげ。

太夫さん、Green fingersの持ち主ですね!



8月20日は、春日神社にて風祭。




(←)梵天は全部で25本あるとのこと。直会の後、
   それぞれの地区の要所要所に立てられる。

(↑)祈祷。神職さん以外は、皆さん浴衣姿。



稲も立派に成長してきたこの季節、
台風などによる被害がないようにと祈り、そして直会。







宮司の難波玉記氏の挨拶に続き…







下座の蛸井伊右ェ門氏が伊勢行きについての報告。

10月には上座・下座が伊勢神宮にて奉納、そのあと
上座は京都の金剛能楽堂、下座は和歌山の道成寺で公演予定。

なんといっても20年に一度のことだから、
皆さん楽しみだろうなぁ!



直会の途中で失礼し、筆者は2012年の当屋だった斎藤利雄氏のお宅へ。

今回は『難波』で手一杯だろうと思ったので、
利雄さんにご指導をお願いしていたものは、
次回ご指導頂く際の予習のために、ビデオに撮らせて頂いた。

刀をさっと払う動作は「血を払っている」とのこと。
確かに、鬼は切られるのだから、刀は血まみれなのだろう。
しかし、そう言われるとなんとも生々しい…



(↑)暑い中、ご無理を申して…
   利雄さん、どうも有難うございました!途中から、
   神社の直会から戻られた太夫さんも合流。

(→)2012年の当屋で大地を踏んだのぞみ君も、
   元気そう。



翌朝、風祭の梵天は、
筆者が滞在したお宿の近くにも立っていた。







今年は大雨に悩まされたようだが、
それでも順調に育ってきた稲たち。
今後も大きな被害を受けることなく、順調に育ち、
無事、収穫の時期を迎えられますように。


双子ちゃんの成長ぶりが見たくて、秋山家にもお邪魔させて頂いた。




(←)元気一杯の奏太くん。

(↑)元気な双子に振り回されるおじいちゃん。
   当屋の今後などについてあれこれお話を伺い、
   貴重な資料も頂き、感謝です。



笛役者さんのお父さんは、
筆者が秋山家にお邪魔するときには大抵不在だったが、
今回は双子ちゃんと一緒に。







滞在の終り頃には、
5年ほど前の夏、筆者が山形市にいたときに知り合った友人が、
はるばる黒川に来てくれたので、
まずは一緒にお墓参り。

そのあと、筆者一人ならまず行くことのない場所に、
一緒に行く機会を得た。







あつみ温泉の足湯付きカフェにて。







(↑)あつみ温泉から鶴岡に戻る途中の海岸にて。

更に日本海に沿って鶴岡に向かい、かの有名な水族館へ。

下は、かの有名なクラゲたち(↓)。






実に幻想的。クラゲといえども侮れない。


友人のご主人も一年前に亡くなり、
筆者は昨年、黒川の帰りに上山市の彼女の御宅に伺った。

5年前に山形市で知り合ったとき、彼女と筆者は同じ悩みと苦しみを抱え、
同じ目に見えない敵と戦う戦友のようなものだった。
彼女の存在は、筆者にとって本当に有難いものだった。

一年ぶりの再会で、この夜はお宿の美恵さんも一緒に、
3人で語り合う。


そうしてとうとう来てしまった、2013年夏の黒川滞在最後の晩。

お宿のすぐ近くにあるお寺で「百万遍」という行事があるというので、
見学させて頂くことに。




(←)掛け軸の「孫八霊神」が気になる…。
   聞いたことのない神の名。

(↑)大蛇のような巨大数珠。
   ところどころに、房のついた大きな珠がある。



誰かをつかまえて「孫八霊神」について伺いたい衝動を抑えつつ、隅で見学。
この年の世話役である遠藤幸男氏の叩く鉦の音で、巨大数珠回しが始まる。


(↓)6人の参加者が、巨大数珠を、
   鉦に合わせて右方向に回していく。

(→)鉦を打つ役の幸男さんは、鉦を打ちつつ
   数珠を回しつつ「南無阿弥陀仏」を唱えるので
   大変そう。




以前は10軒の家から人が集まっていたが、今は6軒、
という話を聞くと、
胸にグッと重い痛みを感じる。







幸男さんが、参加者にお札を配る。
筆者も一枚頂いてしまった!
…すごい記念品。大事にします!







数珠を回している間、
筆者は鉦の音や念仏の声を、参考のために録音していたのだが、
その時間、約11分。

その後の直会、約2時間30分。

上の山地区の師匠さんである遠藤貞吉氏もおっしゃっていたが、
昔は皆で飲むための「口実」としてこういう行事があったのだ、
飲むのが目的で、祈祷や念仏は口実、と。

「…今は?」と伺うと、
「今もその流れを汲んでる」とのこと。

よそ者の筆者も仲間に入れてくださり、
村の小さな集いは、
飲み食いしつつ、あれこれ話し、ゆっくり時間が過ぎていく。


「孫八霊神」とはどういうものか、伺ってみた。

参加者6人のうちの最長老は、
「知らねぇぞ、俺は。考えたこともねぇ。」

そこで最長老以外の意見をまとめると、
黒川の他の地区でもやっているので、おそらくこの土地の人だろう、
おそらく昔、何かのことでこの土地に貢献した人だろう、
ということだった。

狂言の師匠さんである五十嵐信市氏からは、
願い事をかなえるお猿さんが山ほどいる神社の話も伺った。
是非一度見学してみたいものである。


貞吉さん・幸男さんとは、お宿での語らいに引き続き、
お寺でも、「黒川の今後」の話になった。

貞吉さんとこんなに話したのも、初めて。
共感するところ多し。


* * *


翌日、筆者は東京に戻ることになっていた。
その朝早く、利雄さんが筆者の愛する御豆を山ほど届けて下さり、
そのあと、今度は百万遍でお会いした「えっちゃん」さんが、
「孫八」についての資料を発見したといって持って来て下さった。

利雄さんがいらした時には筆者はまだ寝起きのパジャマ姿だったため、
直接お礼を言えなかった。
この場を借りてお礼申し上げます。利雄さん、お心遣い、もっけです。
甘くてコクがあって、とても美味しかった!

「えっちゃん」さん、孫八の資料があっさりと見つかったのは、
きっと孫八が、自分のことを筆者に知ってもらいたかったからだとおっしゃっていましたが、
「えっちゃん」さんがわざわざその資料を届けてくださらなかったら、
孫八と筆者が出会うこともありませんでした。
今回初めてお会いし、お話できたこと、とても嬉しいです!


「モリ供養」や「孫八供養」、「百万遍」などなど、
またまた新たなことを学んでしまった!
学んでしまうと、筆者の性格上、またまたあれこれ調べてしまうだろう。

もともと「日本人にとっての信仰心とは何ぞや」という疑問から
足を踏み入れた黒川能。

次から次へと、筆者に考える材料を与えてくれて、
九年経った今も、尽きることがない。


滞在中、橋本地区の師匠さんである釼持孝文氏から、
座員数の変動などに関する貴重なデータを頂いた。

これも、この場を借りてお礼申し上げたい。

孝文さん、美しくまとめられたデータを、有難うございました。
その上、貴重な本をお貸しくださり、感謝です。

そして、太夫さん!
暑い中、毎日ご指導くださり、有難うございました!
最初の2〜3日は、昨年に引き続き絶望的な気分だったけれど、
その後は、楽しいこと、楽しいこと!

貴重な経験をさせて頂きました!

太夫さんの動きは、
全体が有機的につながっていて、メリハリがあるのに滑らか。
(おみ足が本調子でないにもかかわらず…。)

どうすればあんな風に舞えるのか…
師匠にせめて半歩でも近づけるよう、今後も自宅で精進します!





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作成日: 2013年8月29日