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例 大 祭


2010年5月3日




このページを作成している本日、
2010年8月25日。

例大祭が終わってから3ヶ月以上経ってしまったが、
あの日を思い返しつつ、御覧頂ければ幸いである。







(←)例大祭の当日は、
   境内に出店が出る。
   これは朝9:時頃に撮ったもので、
   まだ準備中。
(→)右は、祈年祭や新嘗祭では
   見られないシーン。
   以前、金峰山神社からの
   お使いだと伺ったことがある。

   でもその時は傘もさして
   いたような記憶が…?








そして可愛い巫女さん達による倭舞。

さまざまな神事のあと、式三番が始まる。

中央ではそう頻繁に見られるものではないが、
黒川では、有難いことに、
2月の王祇祭、5月の例大祭、そして8月の荘内神社例大祭と、
年に3回も見られる。

ただし、3回ともそれぞれ特徴がある。
王祇祭では上座では通常の翁とは別の「所仏則翁」が登場するし、
2日目の神社の舞台では千歳は舞わない。

5月には上・下両座の合体版。
翁を上座がつとめれば、三番叟は下座。
千歳は「翁」をつとめる方の座から。

8月の荘内神社での舞台では、片方の座で
千歳・翁・三番叟の全てが行われる。



 2010年の例大祭では、千歳と翁が上座。
 …ということで、上座の斎藤賢一太夫さんが、
 ふんわり品よく翁を舞う。
 
 面を掛ける後見役は下座の上野由部太夫さん。




上座の翁に続き、下座の三番叟。
面を受けるのは清和政俊氏。
右端が、千歳(上座)の釼持不思議氏。

右は面を掛け、鈴と扇を持って舞う「鈴の段」。




筆者は黒川の三番叟が大好き(リズムもメロディーも舞も)。
でも、写真に撮るのはとても難しい。

大抵満足のいくものは撮れないのだが、
今回は本当に悲しいくらい。ごめんなさい…。


さて、式三番のあとは、下座による能『杜若』。

今年の王祇祭と同じで、後シテを清和勉氏がつとめるが
今回は前シテも同氏が!

本来は同じ役者構えと後の両方をつとめ、
舞台上で変身するものだが、
王祇祭では時間の制約がある(特に下座の場合)。

下の写真は、左側が前シテの里の女、右側が後シテの杜若の精。






勉さんの演じる女性役は、そこはかとなく、色っぽい。
舞台ではない場所で話す時の印象は、
ごく普通の男性なので、
こういう女性的な雰囲気はやっぱり演技なのだろうが、
なんだかごく自然に見える。
演じている本人に「演じている」という意識はあるのかな…
それとも、舞台では別の人格が降りてくるのだろうか…

王祇祭の舞台に引き続き、息子さんと共演。
下の写真が、ワキを演じる清和幸輔氏。








しっとりと『杜若』が終わると、今度は下座の狂言『三本柱』。
下の写真は、太郎冠者、次郎冠者、三郎冠者の3人が、
3本の木を、
どうやって1人2本ずつ持って帰るか、思案しているところ。







三角に置いた柱の端を一人が2本ずつ持ち、
三角形になって囃しつつ帰ってきた3人を見て、
この不思議な命令をしたシテの果報者も
三角の中に入って踊りだす。

めでたし、めでたし。


狂言で笑った後は、ついに最後の演目。
上座の『鞍馬天狗』。

下座の『杜若』が、清和さん父子二人で立ち役者をつとめる
しっとりとした雰囲気の舞台であるのに対し、
『鞍馬天狗』は登場人物山盛りの華やかさ。




王祇祭のときには
子供も大活躍だが、
それ以外のお祭りでは
そう頻繁には見かけない。

しかし今回は嬉しいことに、
筆者がひそかに(?)
思いを寄せる(?)
秋山愛輝くんが牛若丸。

大地踏で初めて見て以来、
次の年、またその次の年と、
大人顔負けの(?)勢いで
急成長を見せてくれる
可愛い少年である。

こんなにちっちゃこいのに、
なんというか、
オーラがあるのだ。




…ビデオも持参していた筆者だが、
なんと!マヌケなことに、充電した予備電池を東京に置き去りに。
ビデオにくっついていた電池で、
辛うじて『杜若』の大半は撮れたが、そこで尽きた。
『三本柱』も『鞍馬天狗』も撮れなかった。

ああ、愛輝君の雄姿が…



 (↑)今回は、上座も親子共演。笛方さんは、
    愛輝くんのお父上の秋山信行氏。

  (←)牛若を慰める前シテの山伏は、遠藤秀隆氏。
    愛らしい山伏だが、実は山に住む大天狗。 



 (↑)こちらが後シテの天狗。斎藤潤一氏。
    山伏姿で約束した通り、牛若に兵法の大事を
    授けんと現れる。

 (→)後半、長刀を持って現れる牛若。
 



こうして例大祭は無事終了。

お疲れ様でした!今回も楽しませて頂きました!

終了後、
普段着の姿に戻った愛輝くんが近くを通りかかったので、
ドキドキしながら(←筆者は大変な人見知り…)
「お疲れ様!緊張した?」と尋ねると、
「はい、少し…でも大丈夫でした」と。

ちっちゃこい子供さんは、いわゆる標準語を話すらしい。
それにしても、頼もしい答え。


お祭りのあと、筆者は初めてお会いした
大阪の研究者の北見さんとご一緒に、
下座の清和勝氏の御宅にお邪魔することに。








上の写真は、
北見さん(左)、勝さんのお父上、そして勝さんの奥方のきみさん。

時間と共に、だんだん人数が増え、入れ替わりもあり…








左が清和勝氏。下座の太鼓方さんである。
そして、北見さんと、もうお一人、研究者の御方、
そして3名の下座の若衆。
一番右は、勝さんのご子息でやはり太鼓方さんの
清和荘一郎さん。








あれ〜…?どこかで見たお顔…。

写真左の彼のお顔には見覚えが。

そうそう、王祇祭と祈年祭の『範頼』で、
なかなか目をパッチリ開いているところを撮らせてくれなかった
梶原景時!

…を演じた平親善薫氏!



目を開いているお顔を
拝見できて、嬉しい筆者。

『範頼』の梶原景時役は
イヤーな役だったが
(…まあ、でも武士の世界って、
あんなものなのかもしれない…)、
ご本人はいたって好青年。

皆でワイワイあれこれ話し、
筆者は美味しいバンケ味噌と
メチャクチャ美味しいご飯を
ご馳走になり、幸福感で一杯。

こんな時期にバンケ味噌を
食べられるなんて思っていなかった。
想定外の幸せ…!



勝さんの御宅は、黒川でも数少ない専業農家であり、
米作りに大いなる情熱を注いでいる。
息子さんの荘一郎さんも、父上のあとを継ぐべく頑張っている。

ご馳走になった炊き立てのご飯も、
ツヤツヤと輝き、見ているだけでもうっとり。
もちろん、食べればもっと幸せ。

奥さんのきみさんは、この日、体調が良くなかったのに、
突然現れた筆者達にも
あれこれと美味しいものを食べさせてくださり、
本当に、感謝と申し訳なさが混じった思いだった。
もっけです…。
遅くまでお邪魔し、お世話になりましたこと、心から御礼申し上げます。


…ところで、
黒川能が神事能であるということと農業との関係は、
黒川の方々自身がどう思っているかは
アンケートでも取らない限り分からないが、
筆者には、切っても切れないもののように感じられる。

…この夏は、そうしたことも、
頭を整理しながら書いてみるつもりである。

今朝、たまたま耳に入ったTVで、
この不況で農業に関心を持つ若者が増えてきていると聞いた。

東大を卒業してIT関連企業に就職した若者も、
会社でボロボロに使われ、
家族と過ごす時間もない状態を変えるべく、
農業に従事する決意を。

それなりに経営もうまくいっているようだが、
年収は会社勤めの時の1/2。
でもカネでは買えない幸せがある、と微笑む。

本当に大切なものは、カネでは買えないものである。





2010年8月25日作成

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