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王 祇 祭

(2010)



その4



2月2日未明、
筆者はよく寄らせてもらっている
上座の御宅で少し休ませて頂いた。
筆者と入れ替わるように、
御宅の方々は受当屋に向かわれた。

少し休んで、6時前くらいに受当屋に伺う、
というプランだったが、
奇妙な夢にハッと目が覚めた時には既に6時!

うひゃ〜、どうしよう!
もう謡は終わってしまっただろうか!
…と心は焦るが、体が動かない。

どうにか立ち上がり、
半分まだ夢を見ているような気分で
受当屋に向かった。







まだ日が出ていない時間なのかな…
薄青色の中で
松雄さん宅からあたたかい光が漏れている。

松雄さんとは何度もお話をしているが、
御宅に伺うのは初めて。
門の前で、どうしよう、入っていいのかな…と
オロオロしていると、
松雄さんのお孫さん達がちょうど車で現れ、
一緒に中に入らせて頂いた。







遅くなってしまったので、
ビデオに撮りたいと思っていた祝言は
終わってしまったのではないかと案じていたが、
まだまだ準備の途中であった。

準備が整ったあと、
来年の当屋を受け持つ松雄さんが
早朝から集まってくれたご親族の方々に感謝し、
これから1年間、皆さんの協力を
よろしくお願いします、とご挨拶。

そして松雄さんを真中に、
お孫さんの一行さん(下の写真右奥)と
松雄さんの妹さんのお孫さんである亘さん(松雄さんの左隣)の三人で、
『高砂』をはじめとする祝言を謡い
(謡のシーンはビデオ撮影をしていたので、写真はありません…)、
そして乾杯。

二人の若者は、来年の上座当屋の王祇守と提灯持ちをつとめる。







筆者は、一行さん・亘さんが、
松雄さんのために祝言を謡うと聞いたので、
それはビデオにおさめて記念にしなきゃ!と思って
お邪魔させて頂いたが、
内輪の集いの中、とんだ余所者が紛れ込んでしまい、
申し訳なかったと反省…。

でも、なるほど、この時点から受当屋の1年が始まるんだと
確認させて頂いたことに、大感謝です。
お邪魔させて頂き、有難うございました。
せめてビデオや写真が、良い記念となりますように。


…こうしてなごやかに受当屋での朝振る舞いは進行し、
やがて松雄さんは神社に向かう時間に。
筆者も同乗させて頂き、神社に向かった。







そろそろ朝の神事という時間である。
上の写真では、まだ人はまばらだが、だんだんと増え、
笛と太鼓の音、歓声、
上・下両座の当人・王祇守・提灯持ちが舞台に並び、
上・下それぞれの当屋から戻ってきた王祇様が、
神社の狭窓に投げ込まれ、
どちらが早く王祇柱に立て掛けられるかを競う神事を見守る。








上の写真は、その神事が終わり、
上・下それぞれの王祇様が王祇柱に立て掛けられているところ。
こうした神事が済むと、
上・下の当人と王祇守・提灯持ちは、
下の写真のように、舞台上で神前を向いて腰を下ろす。
王祇柱を中心に、
写真向かって左が上座、右が下座である。







祈祷などに続いて、脇能の上演。
まず、上座による『難波』。








王祇祭では子供も大活躍。
ワキの廷臣・斎藤忠勝くんと、ワキツレの釼持陸斗くん、釼持龍星くん。
ワキツレの二人は、昨年の王祇祭の大地子である。




(↑)前シテの尉は、上座太夫の斎藤賢一氏。

(←)ツレの男は、斎藤拓道くん。
   写真左端の、太鼓の御方は(太鼓は見えないが…)
   拓道君のお父上である斎藤道雄氏。







今回の天女(木華開耶姫)は、遠藤拓人くん。
さほど緊張している様子もなく(?)、
練習通りの出来映えのようでした!








そして後シテの王仁は、上の山の師匠さんである遠藤貞吉氏。


…続いて、下座の『高砂』。




(↑)当屋とは役者さんが変わり、
   前シテは大杉地区の師匠さんである清和勉氏、
   ツレの姥は清和博幸氏。

(→)後シテの住吉明神は、下座太夫の上野由部氏。



筆者は今回、下座側の見所で舞台を見させてもらっていた。
「めぐりの長人衆」と呼ばれる、
舞台をグルリと囲む長老方のすぐ後ろにいたので、
ついつい、皆さんの様子にも目を惹かれた。







お家の方がおじいちゃんのために用意した
ポットやお弁当が並ぶ。
ポットには、熱燗にしたお酒!
舞台を見ながら、皆さんで飲んだり食べたり。




(←)『高砂』の時には、熱心に謡本を目で追う御方も。

(↑)仲良し(?)のお二人が、
   肩を寄せ合って話すお姿も、微笑ましい。


筆者のすぐお隣にいらした女性は、
めぐりの長人衆のお一人である
義理のお父上の付き添いでいらしていた御方で、
美味しい、お手作りの稲荷寿司やお菓子、お酒などを
御馳走になってしまった上、農業に関する思いなど、
興味深い話を色々と伺うことができた。

この場を借りて、心より感謝申し上げます。



 …脇能のあと、目玉である大地踏が始まる。
 この2日目の、お宮での大地踏は、
 上座と下座の大地子が同じ舞台に立つため、
 ストーリー性が高く、所作の比較も興味深い。
 右は、上座の大地子、斎藤真之介くん。(→)



そうして式三番が始まり、だんだんとクライマクスが近づいてくる。

左上の写真は、式三番の中、
所仏則翁が面を掛けるところ。
所仏則翁は、王祇祭のときだけ演じられる翁で、
上座の釼持源三郎家が世襲でつとめている。

白い装束に身を包んでいるのが、釼持正氏、
扇に面をのせているのが、
御子息で、上座当屋での所仏則翁をつとめている釼持英正氏。
翁の向かいに座しているのが
千歳の釼持不思議氏。
(王祇祭の舞台では、千歳の舞は省略される。)




(↑)所仏則三番叟を演じる下座の清和政俊氏。

この三番叟の頃から、上下両座の若者が舞台を踏み鳴らし、
歓声をあげ始め、いよいよ祭りがクライマクスを迎える。



左上の写真は、棚上がりの少年達が、王祇様と共に棚に上がったところ。
この棚上がり尋常も、上座・下座の競争である。

このあと、少し時間を置いてから、
餅切り尋常、布剥ぎ尋常と、
たてつづけに上座・下座による競争の神事が続く。

左上の写真で、王祇様のポンポンのすぐ上に
大きな鏡餅があるのがお分かりだろうか。

餅切り尋常は、棚上の少年達が、この餅を切り落とす。
それに続いてすぐに、少年達は今度は王祇様を棚から下ろし、
下で待ち構えている者が王祇様から衣を剥ぐ。

あっという間の出来事で、
写真ではマトモに記録できないので、
今回はビデオ撮影。


剥いだ衣は、来年の王祇守の首に巻きつけられる。



  



上の写真は、来年の上・下当屋で王祇守と提灯持ちをつとめる方々。

衣をはがれた上・下の王祇様は、来年まで内陣でお休み。

釼持松雄さんのお孫さんである一行さんは、
来年の王祇守。
そういう訳で、首に王祇様の衣がグルグル巻きになっている。

このグルグル巻きは、
受当屋に戻り、祝言が謡われてようやくはずせるとのこと。


こうしてこの年の王祇祭は終わるのだが、
次の祭の準備は既に始まっている。




次のページでは、2月3日の受当屋の様子を少々ご紹介します。




作成日:2010年3月01-02日

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