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松崎便り

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2009年5月23-24日


龍と蛍と蔵づくり




今回の松崎滞在の目的は、以下の通り:

@ 4月の滞在時に出会った漆喰鏝絵(しっくいこてえ)の
  龍作り名人に、制作風景を取材させて頂く。
A 石部にて、田植えの終わった棚田を撮影する。
B 岩地にて、ホタル鑑賞と、初のホタル撮影を試みる。
C 5月24日、町内にて蔵つくり隊の作業をお手伝いする。


今回も、松崎在住のお二人にご案内頂いた。

まず、的確・迅速な計画・実行力と、
たぐい稀なる几帳面さ(自称「神経質」)を誇る山本さん。
今回も前回もたった1泊という短い時間で、
これ以上はあり得ないくらい充実したプランを
準備し、実行して下さった。

もうお一人は、
どちらかというと山本さんとは対照的な性格で、
なおかつこの上なくチャーミングな森さん。
明るい笑顔と他人に対して開かれた友好的な性格は、
多くの人を魅了する。

筆者は、自分としてはこのお二人の中間に位置する
凡庸なタイプと思っているが、
他人の眼から見れば、奇妙な三人組かもしれない。

いずれにせよ、お二人のおかげで
上記@〜Cの目的は全て果たすことができた。


まずは、山口地区の佐藤さんとの再会…





佐藤さん宅の作業場にて。
今回は円形の石膏ボードに龍を作っていらした。



 上は佐藤さんが漆喰鏝絵制作の際に
 愛用している小さな道具達。
 左端上の、少し大きな鏝以外は、すべて
 佐藤さんのお手作りのもの。
 熟練の手で龍の手足を作っていく。
 単に漆喰だけを使うのではなく、
 補強のために、中に和紙やステンレスの
 針金を入れている部分もあるとのこと。



そのほか色々、鏝絵について伺った。
何故そんなにあれこれ伺ったかというと、
筆者も自分で作ってみたい!という気持ちが出てきたからである。

制作方法は、筆者が想像していた
「漆喰と鏝だけを使う」という方法ではなく、
実に様々な、
佐藤さんが経験を重ねていくうちに
自ら工夫・開発した方法や材料が用いられており、
目から鱗であった。





たくさんの下絵も見せて頂いた。
佐藤さんのお父上が使われていた下絵らしい。
缶に入れて保存されているだけだったが、保存状態は良好。
昔の、ちょっと良い蔵の恵振りや持ち送り部分には、
漆喰職人さんによって、
こんな華麗な装飾が施されていたのです…

左側の手は佐藤さん、右側で紙を押さえる手は森さん。




佐藤さんご夫妻。
奥さんも漆喰鏝絵をなさる御方である。

「夏に1週間くらい弟子入りできるでしょうか」と伺うと、
笑顔で、「どうぞどうぞ!」
…是非、実現させたい。


佐藤さんの御宅をあとにした3人は、
石部の棚田へ。






曇り空のわりに、前回よりもはっきり海が見える。
棚田をかなり登ったところから撮っているのだが、
水平線の位置が高〜く見える。

5月半ばに480人近くの人が集まって、田植えをしたそうだ。
可愛い苗が行儀よく並んでいる。

田んぼの中には、どっさりと、おたまじゃくしが泳いでいる。
足の生えたものもけっこういる。
おたまじゃくしの芋洗い状態である。






左上は、山本さん(左)と森さん(右)。
棚田のすぐ脇には食べられる木の実もたくさん。
あま〜い桑の実(右・上)と、
酸っぱいキイチゴ(右・下)。


棚田には生き物もたくさん。


頻繁にやってくる人間はもちろん、
上記の通り、田んぼの水の中には
たくさんのおたまじゃくし(左)。


トンボもすいすい飛んでいた。
激減しているらしいミツバチも、
筆者のシャツの上にとまった。


そして、沢蟹(左・下)。

つぶらな目を
キョロキョロさせながら、
一生懸命、横歩き。

なんだか不器用な姿が
微笑ましい。



さらに、どこからやってきたのか、
カモが2羽。

決してアイガモ農法という
わけではないらしいが…



     棚田周辺には色々な植物が生きている。
     可憐な野の花たちも。
     下の白い花はウツギ。
     右の紫色の花はハンショウヅル。
     形が「半鐘」に似ているところから名付けられたそうだ。



   ホタルが飛び交う時間まで
   まだ間があるということで、
   牛原山へ。

   到着すると、
   お二人の知人の方が、
   愛犬「ジミ」と共に。
   「ジミー」ではなく、「ジミ」。
   フル・ネームは
   ジミ・ヘンドリクスとのこと。
   …ギターがうまいのかな…

   人懐っこい柴犬で、
   筆者もたくさん頭をナデナデ。

   右はジミとたわむれる森さん。



     牛原山の展望台から眺めた
     松崎の町。

     松崎は西伊豆の中心となる町。
     電車が通っていないのに、
     よく「駅」という言葉を耳にする。

     バス・ターミナルのことらしい。
     
     駅=鉄道の駅という
     固定観念のある筆者には、
     なんとも新鮮な響き。

     海と山のおかげで、
     美味しい食材も豊富。
     



その山海の恵みの一端が、この日の夕食 (↓)。





イサキの塩焼きの定食。
有難いことに、一人一人に一人前の御釜で
炊き立てのご飯を出してくれる。
イサキの塩焼きはもちろん、
明日葉と新玉葱の天ぷらも、さっぱりカリッと揚げていて、
メチャクチャ旨い。
手前のサラダには自家製の梅酢をドレッシングとして。

店には数種類のところてんが用意されていて、
食事を注文した人はお好きなだけどうぞ、ということになっている。
ベーシックな、普通のところてんの他に、
寒天ゼリーのようなものも。
黄粉と黒蜜をたっぷりかけて頂く。

お店の名前は「さくら」。
気取りのない食事処で、料理も美味しく、女将さんも気さくな御方。
松崎に行ったらまた寄りたいお店である。



…食事を楽しんで、今度はホタルを求めて岩地へ。

岩地に向かう途中には、ペンギンを飼って(?)いる御宅がある。

車で松崎市内から岩地に向かう際、
筆者はいつも見過ごしてしまうのだが、
森さんが、その御宅の近くを通ると、
「あーっ!ほら、またいる!立ってる!」と叫ぶ。
どうやら、いつも戸外に立っているらしい。

お二人によると、ペンギンは、皇帝ペンギンだそうで、
「グァ」と、変な声で鳴くらしい。

暑い日本で、ペンギンが生きていけるのか?
戸外で飼われている番犬のように、つながれているのか?
それとも、つながれているわけでもないのに、
逃げずに、ただ家の前で立っているのか?

ミステリアスなペンギン。
次回は、可能なら、撮影してみたい。


…さて、岩地のホタルの里に到着。





上が、筆者が初挑戦したホタル写真。
う〜む…気味の悪い色だ。
今回は、事前に勉強していく時間もなかったので、
次回は、もう少し、
その場の雰囲気が伝わるような写真にしたいものである。

とにかく、最高のタイミングだったと思う。
週末で、人が多かったのが難点だが、
まさにホタルの乱舞。

天から降ってきた星が地上で飛び交い、たわむれているかのような…
実際、上を向けば本当に美しい星空。

時折ホタルがスーッと上に飛んでいくのだが、
それを目で追いながら天を見上げると、
輝いているものがホタルなのか星なのか、
分からないくらい。

たくさんのホタルたちは、なぜか、ほぼ同時に光を放つ。
不思議である。

人懐っこいのもいて、人の服や腕にとまって光る。


ものすごーく贅沢な時間を過ごさせて頂いた気分である。

ホタルさん、山本さん、森さん、有難う…!


……


翌朝、町中をキョロキョロ見ながら、歩いて作業現場まで。





町中の一角。ニャンコもいます。

町内には本格的なミニチュア刃物を作る鍛冶屋さんの店もある。
(筆者が歩いていた時は、まだお店は閉まっていた。)





上はレトロなロマン漂う床屋さん。





酒屋さん…だけど、大のビートルズ・ファンらしい。

筆者は幼少より ドイツの3大B =バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの大ファン。
(「bwv82」 は、大好きなバッハのカンタータ、'Ich habe genug' の作品番号。)

その他、スカルラッティやモーツァルト、シューベルトなども大好き。

…しかし高校生の時に少々浮気して、イギリスのBにはまりました。
今でもほとんどの曲を、歌詞カードを見ずに歌えます(笑)。

…この酒屋さん、道路に面した壁には
アルバム「アビー・ロード」ジャケットのビートルズのシルエットまで、
ほぼ等身大でデカデカと描いています。
熱狂的なファンとお見受けします…。


  そして、松崎といえば、なまこ壁。

  惚れ惚れします。
  特になまこの土蔵は、土蔵のどっしりとした造りと
  なまこの軽快なリズム感が、絶妙なマッチング。

  右の写真は、塀の文様も凝っていて面白い。


さて、作業現場に到着。長八美術館前の広場である。



   今回は、なまこの中塗り作業。
   上は、中塗りのために、普通の漆喰に砂を混ぜた
   砂漆喰を作っているところ。

   (←)背景に見えるモダンな建物が、長八美術館である。


砂漆喰が出来上がると、各自作業開始。


   上は、リーダーの関賢助さん。 
   砂漆喰の塗り方を指導中。
   森さんも真剣。中塗りで、
   なまこをなだらかなカマボコにする。
  お名前を伺うのを忘れてしまいましたが、
  熱心な隊員さん。
  扉付近のなまこ塗りを行う山本さん。
  黙々と仕事に励む。  






上は、お昼休みの風景。
談笑する森さん(写真右)と鈴木さん。
蔵に青いビニールシートがかぶされているのは、
雨が降ったりやんだりしていたため。






昼食を食べ、
蔵に取り付けられる予定の古民家から譲り受けた扉を見学し、
もう一仕事して、2時過ぎ頃、
そろそろ帰りのバスの時間ということで、皆さんとお別れ。

上が今回の作業参加者。皆さん、お疲れ様でした〜!


今回も、前回に負けないくらい充実した1泊の旅。

山本さんと森さんには、本当に、お世話になりました。
この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
すっかり友人のようになってしまい、嬉しい限りです。

旅の醍醐味は、
なんと言っても人との出会いだと思う。
それまでお互いの存在すら知らなかったのに、
ある時出会い、友人になれるって、
本当に、有難く、幸せなことだと思う。

それから、松崎の自然にも、感謝。
ホタルの乱舞には、心底感動しました。
棚田は自然と人間の合作かなぁ…いずれにしても、美しい風景を有難う。





2009年5月25-26日作成

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