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松 崎 再 訪

なまこと花と職人さんの町


その1

2009年4月11日




2月の松崎訪問で、
ますます海鼠(なまこ)と海鼠蔵に惹かれた筆者は、
新学期の授業が始まる直前の4月11日、
再び松崎へ!

今回は電車の旅。
始発の井の頭線を使い、JRに乗り換え、
東京駅から久しぶりの東海道新幹線。
ここのところ、新幹線といえば常に上越新幹線か山形新幹線なので…

熱海で伊東線&伊豆急行に乗り換えて、
下田まで行こうか、蓮台寺までにしておこうか悩み、
結局、蓮台寺で降りて、そこから松崎まで、
バスで約45分。

降りたバス停から、
キャリーに入れたカメラ類をゴロゴロ引きずりつつ、
蔵づくりの現場へ。





やってます、やってます。
2月の松崎のページでもご紹介した、伊豆文邸の庭。
漆喰を作るために、
「つのまた」という海草を、グダグダになるまで火にかける。
つのまたは、糊の役割を果たす。





「とろ火」でつのまたをグツグツ煮るのが理想なんだけど、
かなり激しく燃えている…
釜戸にくべる薪の調節は難しいようだ。

この釜戸と、お隣の小さな流しは、
はじめから伊豆文邸の庭にしつらえられているもの。





高校生もボランティア参加。
ボランティアの年齢層は幅広く、
年の差を越えて、和気あいあいと作業を共にする。

一つの目的のために、
色々な世代が集まって協力するのって、
いいですよね。




左上の写真は、
美的才能豊かな高校生。
将来は独創的な作品を生み出す職人志望だそうだ。

右上と下の写真は、満開の花桃。
この花桃は花弁が細く、たくさんあり、菊のような形なので、
「菊桃」と呼ぶそうだ。
なんともあでやかな桃色。

(↓) 古いなまこ蔵も、ちょっと色気づいて見える。





(↓) 出来上がって、糊状の液体を濾した後のつのまた。





(↓) こちらは伊豆文邸から道を挟んでお向かい、
長八美術館前の広場。





つのまたの煮汁と、
「すさ」(写真手前に見える、ふわふわの繊維質)を混ぜ合わせ、
漆喰を作っていく。
このあと石灰などを入れ、白い漆喰となる。

早稲田大学の学生さん達も参加。

一方、なまこ蔵の方は…





こんな感じ。

一番地面に近い部分で、この写真では、職人さんが、
なまこの幅を決めている。

いや〜、これがまた、大変な作業で、
筆者は、前回もお会いした職人さん(写真左の帽子の御方)に
色々伺いたいと思っていたのだが、
言葉をかけるのも憚られるくらい、大変そうだった。

…え?全然大変そうな様子に見えない?

この写真ではそう見えるかもしれない。
しかし、実際、びっくりするほど大変だったのだ。
四半目地のなまこ壁を作ることの大変さを
思い知った。

以下、徐々にその大変さをご紹介していく。
その前に、昼食の風景。





後方に見える小さな蔵が、
蔵つくり隊が手がけているなまこ蔵。
本格的な、なまこ壁の土蔵である。
完成後は、休憩所として使用される予定とのこと。

良い天気で、汗をかくくらいの暑さだった。
筆者は腕まくりをしていたら、手と腕がすっかり日に焼け、
数日後には皮膚がボロボロとはがれてきた。

…美味しいお弁当を頂き、ホッと一息。
ほとんどずっと立ちっぱなしの作業で、
ボランティアといっても決して楽なものではない。
力仕事に、道具類の洗浄など、
いわゆる「3K」の仕事内容かもしれない。
だが、高校生から老人まで、
この小さな可愛いなまこ蔵のために汗を流している。





仕事再開。


  (↑) 瓦を接写。瓦は四隅に釘穴が開いており、
     釘穴に、ビャク杉の木で作られた木製の
     釘が打ち込まれている。
  (↑) こちらが杉の釘。反り返っているものが
     良いらしい。米ぬかに入れて熱すると、
     米ぬかの油分を吸収して強度が増す。

漆喰のなまこは、この釘の部分が隠れるような幅で作られていく。
通常は、瓦の幅の4分の1とのこと。2尺5寸が一般的。

今回は、なまこの幅を下書き(?)する、「墨だし」という作業が行われ、
そのあと、なまこの下塗りが行われた。





墨だしの作業中。





この作業の何がそんなに難しいのか?

瓦が数枚程度で全て同じサイズなら、容易なことだろう。

しかし実際には数多くの瓦が蔵の壁を覆い、
その上、これらは古民家の瓦を譲り受けたもので、
サイズにかなりばらつきがある。

…ということは、
それぞれの瓦の四隅の釘が隠れるように
なまこの幅を決めるべく
2本の直線を引いてみても、
そこから外れてしまう釘部分が出ることもある。

1つの蔵の壁で、
こっちのなまこは太いのに、あっちのなまこは細い、
というようなことがあると、
均整が取れなくなり、
なまこの美、なまこのリズムが、失われてしまうのである。





(↑) こちらが「墨だし」に用いる道具。
糸に赤い粉(?)が付着して引き出され、これで直線(なまこの幅の目印)を引く。





苦心の末、こちらの面の墨だし作業は終了。
墨だしが終われば、その線に合わせてなまこの下塗りが行われる。

左官職人で、このプロジェクトのリーダー的存在である
関賢助さんが、東京から来た学生さん達に
漆喰いの扱いについて指導する。


 
漆喰を塗る。 反対側の壁で墨だし。





必死の作業。

上の台にうつぶせになって作業をしている職人さんは、
少ししてから下に降りてきて、
「ギブ・アップ!」という表情で、「もう帰りたい」と。

…でも、そんなことを言いつつも、
すぐにまた作業に戻り、熱心に続けていた。





全体の作業風景。




墨だし作業が続く。
なかなかうまく合わず、本当に大変だった。



四苦八苦の末、こちらの壁も墨だしが終了。

筆者も漆喰を塗ってきた。

けっこう難しい。

鏝(こて)は横に動かしながら塗ると良いそうだ。
そうすると、自然と、ほのかな「かまぼこ」状になる、と。

…関さんはそうおっしゃるのだが、
筆者の場合、鏝を横に動かしても、
かまぼこ状にはならない。
経験の差か、筆者が不器用すぎるのか。

それにしても、こうして自分の手で塗った漆喰が、
この蔵の一部として生きていくなんて、
嬉しいなぁ!


…何故今回ここまで墨だしで苦労したかというと、
関さんがおっしゃるには、
墨だしを担当するはずの職人さんが、今回欠席だったためだそうだ。
その職人さんは、前段階で、今回の墨だし用に
色々と印をつけていたそうで、
墨だしについて全てを把握しているはずの彼が欠席したために、
大変なことになってしまったということだった。

役割分担で行う団体作業では、
一人欠けることが大きな意味を持つんだなぁ…






こうして本日、4月11日の作業は終了。
皆さん、お疲れ様でした〜!

中央の青いTシャツの子は、この4月から高校3年生。
夏にある入学試験の準備のため、
蔵のボランティアは今日が最後とのこと。
「今まで皆勤賞だったのに…。最後までやりたかったんだけど…」と、
とても残念そう。

でも、蔵の作業は秋まで続くという。
この蔵は、静岡県で10月に開催される国民文化祭に参加する予定である。
だから、夏の試験の後、
最後の総仕上げで、きっとまた一緒に作業できるよね!


次のページでは、
松崎の海鼠蔵とその細部、漆喰芸術などなど、御覧下さい。




2009年4月25日作成

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