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祈 年 祭

(2011年3月23日)




祈年祭見学のため、三月、再び黒川にやってきた。







…王祇祭のときに比べれば雪は減っているものの、
まだまだ春は遠い、といった感じの風景。







あらら!赤い布がはがれている!

以前見たときには、
中には一種のお地蔵さんのようなものが
おさまっているのだろうと思ったが、
中はからっぽ…。

どこかに移動させたのかな…。


この日は上座のさらいを見学させて頂くことになっていた。

かなり早くに到着した筆者は、
やはり早めにいらしていた釼持孝文さんのおかげで、
公民館に入れて頂き、
ストーブのそばで開始時間を待つことに。

壁には…



NHKが1年間黒川を
取材して作った番組の
ポスター!
巨大地震に伴い、
公的施設の夜間使用の制限と
電気・燃料の節減依頼。
4月22日には、
上座は九州は熊本に飛び、
加藤神社にて公演!


…夜間使用を制限するといっても、
さらいはやはり夜でないと出来ないもの。

地震は、東京でもひどく揺れ、
筆者自身は帰宅難民にはならずに済んだものの、
あの日は、本当に恐ろしい、異様な一日だった。

その後、自宅に戻ってからTVで見た映像は、あまりに悲惨。
職場も混乱し、閉鎖されてしまうし、
今回の祈年祭は控えようかと悩んだが…結局来てしまった。


…だんだんと人が集まり、練習が始まる。
今回の上座の曲は『黒塚』。







謎めいた前シテは遠藤啓一氏。

本番の舞台が楽しみ。

さらいの翌日は、上の山にお邪魔した。






この日は8:00pmから、上記のポスターにある、
(↑)ちょっとおすましした
   せつさん。可愛らしい。


NHKが1年間黒川で密着取材をして作成した番組が
放送予定だったが…これも地震の影響で、先送り。

渡部家の皆さんは楽しみにして待っていたのだが、ガッカリ。
元生さんは、落胆のあまり倒れてしまった。




そんなこんなで、祈年祭当日。







やはり今年もあっくんが牛役。
スクワットの姿勢で舞台を何周もするので大変!







田圃の準備が整うと、ピーナツを蒔いてくれる。

このあと可愛い巫女さんたちの舞があり、
一連の神事が済むと、能が始まる。




最初は下座の『岩船』。

前から通しでやるのは
珍しいとのこと。

麗しいワキ集団は、
時の天皇に仕える臣下・
清和博通氏と、
その従者・清和荘一郎氏と
清和愛翔くん。




高麗・唐土の宝を買い取るように命じられ、住吉の浦に。






臣下と従者達が市で出会ったのは、
(↑)いつもは太鼓方さんの
   荘ちゃん。
姿は唐人だけれど日本語を話し、銀盤に宝珠を載せて持つ
不思議な存在。
そしてその宝珠を大君に捧げるのだと言う。

老人役は小林範正氏、ミステリアスな童子は清和克彦氏。




童子は、実は自分は帝に献上する宝物を満載した
天の岩船を漕ぐ天の探女であるといって消える。






後半、まずは後ツレの童神が現れ舞い、
そして後シテの龍神、登場。
童神は、下座の三番太夫さんである清和政俊氏、
龍神は大杉地区の師匠さんである清和勉氏。



 櫂竿を使ったダイナミックな龍神の動き。

「八大竜王は海上に飛行し
 御船の綱手を手に繰りからまき
 潮に引かれ波にのって…」と、スケールが大きい。




壮大で見ごたえのある曲!

『岩船』に続くのが、下座の狂言『蟹山伏』。




(←)蟹の精。遠藤一朗氏。
(↑)今晩のおかずにしようとして、
   逆に耳を挟まれてしまった強力・平親通明氏と、
   行法で引き離そうとする山伏・小林貢氏。








…ところが山伏もはさまれてしまう。
二人を挟みつけ、一体どうするのかと思いきや、
蟹の精は二人を突き放して逃げ去ってしまう。


狂言の後は、上座の能『黒塚』。
舞台は福島県の安達原。







熊野・那智の山伏祐慶とその従者達の登場。
祐慶が遠藤洋一氏、連れの山伏が釼持亘氏、能力が難波義幸氏。

安達原で行きくれてしまい…







どうにか見つけた一軒家に宿を乞う。
断られるものの、ほかに当てもない一行は懇願を繰り返し、
一夜の宿を借りることに。



祐慶は、見慣れない
枠かせ輪を発見し、
是非使ってみてくれと
あるじに頼む。

(宿を借りた上に、
 注文の多い客である。)

そうして糸を繰り始める女。




我が身と老いを嘆き、涙を流し…

そうして夜も更け、冷え込みが厳しくなると、
女は山から薪を取ってくるという。



(←)留守中、決して閨を覗かないようにといいふくめる。

(↑)しかし、そう言われると覗きたくなるのが人の性。
   能力は気になって眠れず、ついに覗いてしまう。
   そこには腐乱した死骸の山が…。








山から戻ってきた女は閨を見られ、
鬼となって山伏らに襲い掛かる。




山伏らは四方を司る明王の名を唱え、真言を唱える。

「オンコロコロセンダリトオギ
 オンナビラウンケンソワカ、etc. etc. …」

鬼女はたちまち弱り果て、



「浅ましや恥ずかしの我が姿」と言いつつ、
夜嵐の中に消えていく。

後シテの鬼女は、上の山地区の師匠さんである遠藤貞吉氏。

『黒塚』の中には、
何故この女がこのような浅ましい身になり果てたのか、
詳しい説明がない(…ように思う)。

むか〜し、似たようなストーリーの漫画を読んだことがあるが、
そこでは主人公の鬼女は、
恋人を待って待って待ち続け、再び会いたいという思いで何百年もの間、
自分の棲む城に迷い込んできた人間を喰らっていた。

『黒塚』の女も、そんな強い情念を宿した存在なのかなあ…



…以上が2011年祈年祭のリポート。


祈年祭のあと橋本の御宅に寄り、
そのあと、王祇祭でお世話になった世帯持ちさんのお一人、
秋山嵩義氏にお話を伺いに。

まず今回の当屋についてお話を伺い、
王祇祭で大事なことは何なのか、再確認させて頂いた思い。
そのあと、世帯持ちさんの仕事の流れを教えて頂いた。

上座は来年の当屋も椿出地区で、
もしかしたらあっくんパパは、2年続けての世帯持ち役となるかも??

もしそうなら、また是非お手伝いしながら
そばで一つ一つ見学させて頂きたいなぁ!







初めてお邪魔したあっくん宅。

可愛い双子ちゃんと初めて対面し、
懐かしのあっくんパパに再会でき、
素敵な奥様方(あっくんママとあっくんワイフ)にもお会いでき、
嬉しく有難いひととき。

この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

また、上記の方々をはじめ、
今回もたくさんの方にお世話になりました。

祈年祭の日、筆者を神社まで運んでくださった大山の斎藤氏、
祈年祭のあと、筆者を軽トラの後ろに載せて橋本まで運んで下さった
下座の役者さんのご親切も、もっけです。

以前一度、後ろに乗せてもらって以来、
軽トラの後ろに乗るのが好きな筆者。
車の中にいるよりも、風を感じていられるのが気持ち良い。
(雨風の強い日はイヤだけど。)

雪に覆われた黒川だったが、
体に感じる風は、もう春が近いことを教えてくれた。





2011年4月10-12日記す

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